ドー・テュン・トゥンさん(38才) ベトナム ホーチミン出身

2023年12月01日

ドー・テュン・トゥンさん(38才) ベトナム ホーチミン出身

JR藤枝駅の近くに2021年10月、「からくないベトナム料理」店がオープンしました。ベトナム料理、バインミー、フォーと大きく染め抜かれた赤や黄色の旗がなびく店に入ると、入口付近には顧客の興味を引きそうなベトナムの食品雑貨が並べられています。その先には、ベトナムの地図や地域ごとの料理が壁に描かれ、アジアンテイストの椅子やテーブルと共に、どんな料理があるのか、どんな味なのか、期待と食欲を刺激する工夫がされています。この店のオーナーのドーさんにお話をお聞きしました。

イメージ画像

ドーさんは、2008年から豊田市にあるプレスの会社の実習生として3年間を過ごしました。一旦帰国した後、2011年に再来日、仙台イングリッシュセンターや日本語専門学校に通い、さらに福島県いわき市にある東日本国際大学経済経営学部で4年間勉強しました。最大の理解者であり、この店の共同経営者でもある奥さん、カオ・ティ・トゥ・タォさんとは、いわき市のカトリック教会で知り合って結婚しました。

オープンまでの経緯をお話しください

大学時代からよく友人達と将来レストランをやろうと、話をしていました。大学時代4年間、高級寿司店でアルバイトをしながら、店の親方からキッチンでの仕事の回し方を、マネージャーからは店全体の経営の流れを教わりました。そこに自分が学んだ経済の知識を合わせて、それらを活かした店づくりをしようと思いました。 ただ、卒業の頃は、その決意と夢には溢れていても、お金や知識もネットワークも無い状態で、時期尚早でした。卒業後、焼津にある管理団体に勤め、技能実習生をまとめる仕事を2年間経験しました。その後いよいよ実行に移す時が来たと思い、妻と一緒にレストランを開くことにしました。

工夫していることや、苦労していることは何ですか?

料理は、叔母がベトナムで結婚式や宴会、祭の料理を請け負う仕事をしていたので、それを手伝いながら覚えました。それ以外に、レパートリーを増やすために、自分でもユーチューブの有名シェフの動画を見ながら研究しています。日本人にベトナム料理を広めたいので、日本人の口に合わせなくてはなりません。店の名前の通り、辛さを控えました。
食材は、東京でベトナムの食材を扱っているベトナム人に頼んで卸してもらったり、沖縄や茨城で農業を営んでいるベトナム人に送ってもらったり、近くのスーパーでも買います。パクチーなど自分で育てている物もあります。
店内は、ただベトナム料理を出す店というのではなく、お客さんを、ベトナムを旅行中のような気分にさせる雰囲気を出したいと思いいろいろと工夫をしました。
オープン最初の頃は、ここに不思議な店が出来た、という印象がとても強かったらしく、「怪しげな店だな?」と疑われていたようです。でも、一度お客さんがうちの店の料理を食べてくれると、美味ししいと、少しずつ口コミで広がっていきました。
平日は日本人のお客が結構いて、週末はベトナム人の実習生たちが多いですね。皆が日本語を話せるわけではないので、ここに来るとベトナム語が話せて、リラックスできるようです。彼らにとって、懐かしさと嬉しさを感じる場にもなっています。

将来の希望は?

ベトナム料理を一人でも多くの人に食べてもらって、広めたいと思っています。まずは静岡県内から始めて、次第に日本全国に展開したいという、大きな希望を持っています。

               取材 ボランティア編集委員 北川エレイン 川島康子