モロッコでのシニア海外ボランティアに参加して

2016年06月08日

シニア海外ボランティア

JICA(国際協力機構)のシニア海外ボランティア制度は日本の持っている人的資源を活用し、開発途上国の発展をサポートしていこうという貢献活動です。対象国の要請に基づいてボランティアを募集し、応募者の中から適任者が選任されて、実際の現地で通常2年間の活動をします。
アフリカのモロッコで障害児支援の分野で活動してこられた市野清さんに、活動報告をいただきました。

モロッコ国における特別支援教育

私は2013年10月から2年間モロッコ・メクネスにてJICAのシニア海外ボランティアとして現地の障害児・者支援の任務を終え、昨年9月末に帰国しました。
モロッコという慣れない土地と風習の中で不安を抱えながら生活したこと、また、片言のアラビア語やフランス語を操りながらモロッコの先生方と仕事ができたこと、また、健康で帰国できたことを大変嬉しく思います。

モロッコの国家教育省は基礎教育就学率向上と教育機会の平等化を目指し、公立学校内の統合クラス(日本の小中学校内特別支援学級)の増設を進めています。私の配属先のメクネス・タフィラレット州(およそ東海4県位の広さ)において2009年の統合クラス設置数は約10クラスでしたが、2012年には50クラス以上に増設されました。一方、教員養成においては、2011年から教員養成課程に特別支援教育が導入されたものの、特別支援教育専門の指導員がおらず、具体的に何をどう指導したらよいのかその支援と助言が求められています。特別支援教育の歴史は浅く、その公立学校内の統合クラスへの障害児の就学率は約3割に留まっています。また、その多くが障害の程度が軽い子供たちです。重度の子供たちの多くは一日を家庭で過ごしています。また、重度の障害を抱えた新生児の生存率は大変低く、早期の医療の発展が望まれます。

現在、モロッコ国における特別支援教育の教育課程(カリキュラム)はユネスコにその編成を依頼中とのことです。私の配属先であるメクネス市内(人口約50万人)には延べ14学級の統合クラスがあり、障害を抱える児童生徒総数は約150人、障害の種類は視覚、聴覚、知的、肢体、情緒障害が各クラスに混在しています。特に自閉症児への対応に困難を示していました。教員は小学校免許状を持つ教員一名と親の会(アソシエーション)が派遣する介助員一名が各クラスを担当します。総教員数は約25名、皆女性です。教育員会主催の特別支援教育の研修会は皆無であり、教員は親の会主催の研修会に自費で参加しているのが現状とのことです。

楽しい教具づくり

どの統合クラスも授業は午前中で終了します。国語、算数、塗り絵の授業が主です。どの子供たちも大変明るく、また、素直です。また、教員も身近にある素材(主に紙、布、プラスチック)を使った教材づくりに励んでいます。しかし、一人一人の障害についての知識不足や実際の指導の経験も浅く、その場しのぎの授業も多々見受けられます。子供たちが「楽しい、嬉しい、もっとやりたい」をキャッチフレーズに楽しい教具づくり(特に木工教具)を皆で取り組むことになりました。

教員は皆女性です。子供たちが塗り絵を好きなように、教員も塗ることと貼ることが大好きです。2年間で延べ29回(1回3時間)の教員実技研修を実施し、多くの木工教具を作りました。完成後は各クラスに持ち帰り、授業で使ってもらいました。多くの子供たちに喜んでもらうことができました。教員からは生まれて初めてこのような実技研修が体験でき感動したとの声が多くありました。

親切で温かな人ばかり

イスラム社会で多くの異文化を学ばせていただきました。最近はIS=全てのイスラム人との見方をする風潮や誤解があるようですが、2年間の現地での生活をとおし、イスラムに住む大多数の人々は皆、親切で温かな人ばかりだということを今になって痛感しております。

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2016年4月28日 市野 清