コロナ禍の中の外国人労働者

2023年03月01日

コロナ禍の中の外国人労働者

静岡労働局の2022年データでは、静岡県内9,016か所の事業所で67,841人の外国人労働者が働いています。ブラジル人18,904人、フィリピン人12,923人、ベトナム人12,615人の3者が全体の66.5%を占めています。コロナが世界の人の流れを止める前、外国人労働者は前年比10%を超える勢いで増加していましたが、令和2年度以降その増加は2%以下までに落ち込みました。
前年比40%を超える勢いで増加していたベトナム人労働者も例外でなく、その増加率は5.4%まで落ち込みました。多くの技能実習生や労働者が夢や計画の変更を余儀なくされたのでしょう。

労働者だけでなく企業にとっても先が読めない厳しい状況の中で、ベトナム人を継続的に受け入れ、技能実習生の力をうまく引き出していると評価される株式会社若鳶(Wakatobi Co.,Ltd)を訪ねて、常務執行役員事業本部長 市川義久様から、その秘訣を伺いました。
若鳶は2007年に株式会社となった若い企業ですが、会社設立の当初から、技能実習生や特定技能者が会社を支えています。雇用すること自体、戦力とすること自体が難しいと思われている外国人の若者を、会社の力にする特別な方法があるのでしょうか。

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今外国人は何人働いているのですか?

下請けを含むグループ全体で、ベトナム人7名とカンボジア人2名が働いています。この内、技能実習期間が終了し帰国する者もいますが、年明け早々にはベトナム人2名、カンボジア人3人が新たに加わる予定です。

日本人に代わり、外国の若者が会社を支えているのですね?

足場仮設がメインの若鳶では体力のある若者が必要です。外国人の若者はパワーがあり頼りになります。日本の若者は体力、気力が必要な体育会系の仕事は敬遠しますからね。

若者が体力を必要としないスマートな仕事を好むのは、外国も日本も同じだと思います。体も大きくない外国人の若者が若鳶に馴染むのは何故なのでしょうか?

足場を組む現場では外国人も日本人も同じ仕事をこなし、互いに相手の安全に気を配ります。慣れない当初はともかく、仕事に慣れれば同じ仕事をこなす同僚です。日本人が常に上に立ち、指示だけする現場ではないことも理由の一つでしょう。
もちろんこうした仕事の特性だけでなく、会社としても努力を重ねました。
足場仮設企業のイメージは、バリバリの体育会系でしょう? それだからこそ、「絶対に手を挙げるな! 言っていることがなかなか伝わらなくても声を荒げるな! 小さな子供を相手にするように接しろ!」と言い続けました。また、外国人一人一人に、担当の日本人を付けました。そのための手当ても付けました。母国の村や町の生活と全く異なる静岡で働き続けることは大変なのです。仕事だけでなく、日々の生活を日本人が支援する体制を取りました。そしたら日本人従業員が優しくなりましたよ。おまけですね。
とはいっても、技能実習生を初めて受け入れた時は大変でしたね。現在の技能実習生は4期生ですが、この間15年以上をかけて、体制や制度を整え、経験やノウハウを積んできました。
こんな工夫や苦労を重ねた結果でしょうか。3年の実習を終えて帰国したのち、2度目の実習のために再来日し一緒に働く若者が3人います。頼りになるし、うれしいですね。

外国の若者はどんな将来を描いて静岡で働いていますか、働く若者の目的は?

若者は、母国で親や親せきにお金を借りて技能実習生になる資金を作り、来日します。このため一番の目的は稼ぐことです。静岡で3年間働き稼いで、その中から借金を返し、仕送りもします。
帰国した者の便りや再来日した者から話を聞くと、帰国し家を建てたもの、彼女を見つけ2度目の実習を終え帰国したら結婚すると予定している者もいます。静岡で働くことを彼らの生活や将来にうまく活かしていて、いいじゃないかと思います。

若鳶と外国人従業員の関係は上手くいっていると思っています。ただ、ベトナム人の習慣でしょうか、時折、寮の一室に集まり、みんなで飯を食べてカラオケします。その度に周囲から苦情が寄せられて困ります。家族や友人と離れて働く若者に息抜きは必要だなとは思いますが、もう少しカラオケのボリュームを下げてほしいのですが、と、最後に加え、市川さんはインタビューを閉めてくれました。 ありがとうございました。

記:編集ボランティア 杉山滋敏