静岡県の企業で働く留学生OB・OGと情報誌ボランティア編集委員の懇談会(後半)

2019年08月27日

 

前回に続き、静岡大学を卒業し静岡県の企業で働く留学生OB・OGの4名を招き開催した編集員との懇談会(11月3日開催)の概要をお伝えします。
今回は、「静岡県企業に就職した留学生はどんなキャリアを描いているのか」、「就職してみての感想はどうか」、「アジアから優秀な人材を引き寄せるためには何が必要だと思うか」等についての意見交換概要をお伝えします。

留学生OB・OG4名は静岡大学を卒業し、県内の企業に就職し、将来を嘱望される優秀な若者です。
ジョシア・セティアンさん(Joshia Setiawan)とトリフェナ ダマリスさん(Trifena Damaris)は兄妹でインドネシア出身、それぞれソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社とヤマハ発動機株式会社勤務、エーニンプィンアゥンさん(Aye Hnin Pwint Aung)はミャンマー出身・スズキ株式会社勤務、そん せいさん (孫 正)は中国出身・株式会社TOKAIコミュニケーションズ勤務です。

どんなキャリアを描いているのですか?会社は何を期待していると思いますか?

(孫さん)
入社する前は自分のやりたいことやポジションを描いていたが、入社後、会社が海外事業展開の支援を私に期待していることを理解し、柔軟に対応している。日本人と異なるアジアの人々の考え方ややり方を理解している留学生の能力は、国際分野で最も発揮できると考えている。また、日本人の同僚に日本とアジアの相違を積極的に伝えることが自分の役割ではないかと思います。
ただ、静岡が大好きですから、今は東京勤務ですが、将来県内で働くことを希望しています。

(エーニンさん)
会社はミャンマーに関わる仕事だけでなく、グローバルで幅広い活躍を求めています。5年目までは自分の専門分野での能力を高める期間だと考えていて、今の部署で一生懸命頑張って成果を出したいです。
大切にしているのは、やりがいを感じ自分の能力や個性を生かすことで、チャンスがあれば積極的に挑戦していきたいです。ただ、ミャンマーと日本の交流と発展に貢献できるような仕事が出来たらよいという希望を持っています。

(トリフェナさん)
私も今は様々なことを学び勉強する時期だと考えています。将来は自分の能力を生かす場所で働きたいと思います。日本以外の海外で働くことも選択肢の一つだと考えています。そして、給与や有給休暇も十分とれ、インドネシアの両親の元へ一年に一度は帰国できるような環境で働くことを期待しています。

(ジョシアさん)
関心が深いコンピュータやソフトウェアなどに関連する仕事が出来る会社を選んで後悔していません。ただこの分野は発展が早いので、その時の興味・関心を満たす面白い仕事をしたいと期待しています。故国に帰国することは今は考えていません。

会社は働きやすいですか?差別など感じたことはありますか?

四人とも職場で差別を意識することなどないようです。ただ、挨拶代わりの「すみません」「ありがとう」にどう答えたらよいのか、仕事上の提案に対する上司の回答「やってくれるとありがたい」はYESかNOか、など結構悩んでいるようです。和を重視する職場の中で留学生は一人ですが、戸惑いながらも異なる意見を提案し、交換し、互いの理解を深めようとする姿勢は彼らの真骨頂です。

(共通)

「留学生OBだから差別されている」とは感じていません。日本人と同様に仕事を任さ
れ、自由に仕事ができる職場だと思います。
ただし、日本人の性格、傾向を学び、物言いには気を付ける必要があります。と同時に、賛成も反対も素直に意見を言い合って結論に至る留学生の方法を、日本人ももっと取り入れる必要があると思います

(エーニンさん)
入学直後は日本人の輪の中になかなか入れなかったのですが、いつの間にか日本人の輪に溶け込むことができていました。その経験があったので、今の会社では日本人の同僚と仲良くすることができました。

(孫さん)
大学や会社で日本人との違いをいろいろ学びました。大学でも会社でもストレートにものを言ってはダメなんです。提案の仕方を変えるなどの工夫が必要です。日本人は異なる考え方や意見の主張に戸惑うのではないかな。留学生たちにとっては、互いの相違を知っていて、そのうえでの意見交換や議論が相互理解を深め、よりよい結果につなげていくのが普通なのです。

(エーニンさん)
日本の企業は日本人だけの経営に危機感を持ち、グローバルな視点を経営に活かすために留学生を雇用しているかなと思います。
日本人がよく使う「すみません」「ありがとう」が初めよくわからなかった。何も悪いことはしなかったのに「すみません」、何もしてあげないのに「ありがとう」といわれる。「どうすればいいの?」と悩んでしまったのが留学直後の思い出です。

アジアの青年を静岡に引き付けるためには何が必要だと思いますか

留学生4人は、「静岡県は住みやすく優秀な企業が立地する魅力ある地域」だと今だからこそ言いますが、母国にいるときには「富士山は静岡にある」くらいの知識しかなく、静岡の大学に行くこと、生活することが「不安でならなかった」と素直に言っています。そして、留学生を静岡に引き付けるヒントを提案してくれました。

(全員)

アニメや工業製品などを通して日本への憧れを多くの若者が抱いています。でも、具体的に留学や就労に向けて動き出そうとすると、母国には情報提供や支援をしてくれる組織や団体は殆どないのです。
「静岡の大学に行ったとして、どんなところに住むのだろう、留学経費を軽減するアルバイトは出来るのだろうか、安全だろうか、差別はないだろうか」等、分からないことだらけで不安で、若者は留学や就労に踏み出すことができません。彼らの不安を払拭するために、「人口80万人の浜松で、学校が紹介するこんなアパートに住んで、アルバイトはこんなのがあって、週末にはハイキングや時折のお祭りも楽しむことができる」等、静岡での留学生生活が想像できるような生活情報を、留学や就労に関する情報とともに、合わせて提供することが必要でしょう。
また、現地の日本語学校は重要です。留学や就労の基盤となる日本語を学ぶ機会となるだけでなく、日本人とのつながりを通して留学や就労が実現することが多いのです。情報や支援組織が少ない中で、日本留学に精通した人のアドバイスや静岡の人とのつながりが、安心した留学や就労に結びつくのだと思います。

留学生OB・OGの4名の皆さん、御協力ありがとうございました。

記:編集ボランティア 杉山滋敏、池田昌弘、川島康子、邑松亨子

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