令和7年度 医療通訳者専門講座

2025年09月30日

静岡県では、外国人の定住化及び外国人観光客の増加に伴い、外国人が病院を受診する機会が増えています。診療の際、医療従事者と外国人患者が齟齬なく意思疎通するには、医療通訳者の存在が欠かせません。
当協会は平成25年より医療通訳事業に取り組んできました。その中で医療通訳者養成講座を開催し、修了生を医療通訳者として登録後、病院からの要望に応じ、通訳紹介を行うことで、医療通訳の体制整備に努めています。
今年度は、近年問い合わせが増えているインドネシア語、シンハラ語、ネパール語の3言語を対象とした講座を下記の通り開催しました。すでに医療通訳者として活動中の方に加え、医療通訳に関心のある社会人から学生まで幅広い層が参加し、医療通訳の基礎知識と外国人診療の現状、通訳者に求められるもの等について学びを深めました。

第1回

日時:8月2日(土)13:00~16:00 方法:オンライン(Zoom) 

参加者:17名

第1部

講義:「医療通訳のための医学の基礎知識」

講師:港町診療所 所長・総合内科専門医 沢田 貴志 氏

内容:体の仕組みと疾患の基礎知識について、内科の観点から説明がありました。まずは体の各部位のはたらきと役割について、続いて疾患の分類とそれぞれの原因、治療法までお話しいただきました。この両方を把握していれば、病気の症状や治療の方向性について大体の見当がつけられること、新たな病気に出会ったときに理解の助けになることもご説明いただきました。ただし、知識をもとに病気が想像できたとしても、それが正しいとは限らないことも教えていただき、通訳する際は想像で話すのではなく、医師や看護師が話したことをそのまま通訳するよう心掛け、わからないことや知らないことは確認してほしい、というアドバイスをいただき、講義は終了しました。

第2部

講義:「インドネシア人医師から見た、日本の医療通訳の現場とよくある事例」

講師:国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 特任研究員/医師(インドネシア)・医学博士 エッフェンディ・カトリーヌ 氏

内容:日本の医療通訳の現状について、インドネシア人医師の視点からお話しいただきました。最初に両国の医療の違いをご説明いただき、日本は全国どこでも同基準かつ同価格帯の医療を受けられるが、インドネシアは地域によって医療の質やサービスに差があること、公的保険と民間の保険で治療内容や費用が大きく異なることなどを伺いました。続いて、医療者の指示通り訳すという鉄則や患者のプライバシー保護など、医療通訳者としての心得をご説明いただきました。機械通訳の活用が増えているが、あくまでも通訳者の補助的存在で、文化的ニュアンスまでは拾いきれないこと、需要が増えても医療通訳者は不足していることを伺い、よい医療通訳者になるためには、患者への共感と医療知識を学ぶ意欲が大切であるとお話しいただきました。

第2回

日時:8月30日(土)10:00~16:00 会場:男女共同参画センターあざれあ501会議室 他

参加者:19名

午前の部(1)

講義:「医療現場で通訳すること ~医療通訳の倫理・心得~」

講師:静岡県立大学 看護学部看護学科 濵井 妙子 氏

内容:医療の場で通訳をすることについてお話しいただきました。 最初に、医療通訳者の役割は患者と医療者のコミュニケーションをサポートし、文化的状況を考慮しながらの正確な通訳を通して患者の健康と安全を守ること、患者と医療者の信頼関係構築を促すことが大切であることを教えていただきました。続いて、医療通訳者の5つの倫理に基づき、正確に通訳する、守秘義務を果たす、中立性を保つ、異文化に対する認識を持つ、専門家という意識を持つことについて、具体例や対処の仕方に触れながら解説いただきました。その中で、文化の違いが重大な誤解ひいては病気の悪化につながりかねないこともお話しいただき、双方の文化・宗教・習慣・医療制度の違いを理解した上で、両者の橋渡し役になってほしい、とアドバイスをいただきました。

午前の部(2)

講義:「通訳者が学ぶこと ~通訳に必要な技術~」

講師:群馬医療通訳者有志の会 代表 原 美雪 氏

内容:群馬県でインドネシア語医療通訳者として活動されているご経験をもとに、医療通訳者に求められる技術について、ご講義をいただきました。最初に、医療通訳者の使命や足さない・引かない・変えないという原則について説明がありました。続いて実際の医療通訳のプロセスについて、当日の持ち物や到着時間、事前の確認事項などを具体的に教えていただいた後、自己紹介の仕方や座る位置の確認まで、細かく説明いただきました。講義後半には、通訳の勉強法として、話者の抑揚を真似ながら同時に声に出して再現する「シャドーイング」や読み上げられた単語を瞬時に自身の言語に言い換える「クイックレスポンス」などをご紹介いただき、受講者全員でその場で練習を行いました。最後に、医療通訳は専門性が高く難しい業務ではあるが、責任感を持ってぜひ挑戦してほしいとのエールをいただきました。

午後の部

講義:「医療現場での通訳を想定した言語別ロールプレイ」 内科・整形外科・産婦人科診療における医療通訳

講師:インドネシア語 原 美雪 氏  シンハラ語 マンジュ カツリラタナ 氏  ネパール語 グルン ニラズ 氏

内容:言語別に分かれ、内科、整形外科、産婦人科の3つのシナリオに沿って、通訳者としての演習を実施しました。各言語の講師よりアドバイスや通訳のコツを教えていただきながら、練習を重ねました。