本セミナーは、毎年、地域日本語教育に関心のある方や、実際に関わっている方が地域日本語教育について理解を深め、情報交換をすることを目的として実施しています。2年連続でオンライン開催となり、87名の方にご参加いただきました。
日本語学習の「場」を紡ぎながら コロナ禍で変わったこと、変わらないもの
講師:社会福祉法人さぽうと21学習支援室チーフコーディネーター 矢崎理恵氏
「さぽうと21」の日本語教室は、外国人も日本人も自分らしく、本領発揮できるようになることを指針に掲げ、様々な取り組みを実施しています。矢崎氏からは、日本語教室の形にこだわらず、参加者の「できるようになりたい」「やりたい」という気持ちに寄り添い、お互いに協力し、励まし合う関係性が重要で、参加者が前向きに目標達成に取り組んでいくことが、さらに活動を豊かにしていくというお話がありました。また、参加者側から次々とアイデアが生まれ、新しい活動を展開することで多くの人がつながっていく様子を具体的な事例や外国人のインタビューコメントを通して紹介していただきました。新型コロナウイルスの影響については、「活動を止める」という発想にはならず、従来の拠点型に加え、「オンライン型」や支援者が出張する「アウトリーチ型」の日本語/学習支援を展開し、試行錯誤を繰り返しながらもぶれずに活動を継続することでお互いにつながっていることを理解しました。
セミナー参加者からは「コロナ禍であろうとなかろうと、人と人のつながりが大事という基本に立ち返ることができた」「参加者のニーズに合わせて臨機応変に対応していることに感動した」「自分も実家のような心の拠り所だと思える教室づくりを心掛けたい」等の感想が寄せられました。
社会福祉法人さぽうと21 学習支援室チーフコーディネーター 矢崎理恵氏

伊豆の国市国際交流協会「日本語話そう会」久木野和暁氏(協会会長)
特定非営利活動法人ARACE(浜松市)代表理事 金城アイコ氏
伊豆の国市「日本語話そう会」は、外国人と日本人が日本語で会話をすることを通してお互いに交流を深めることを目的としている日本語教室です。久木野氏からは、以前は多くの技能実習生や日本人配偶者等の外国人が通っていましたが、新型コロナウイルスの影響で参加者の人数が大幅に減少してしまったという報告がありました。また、日本語ボランティアの高齢化や行政との連携の難しさについても課題として挙げられました。
浜松市「ARACE」は、小中学生を対象とした日本語初期指導や宿題支援、不登校や不就学の子どもを対象とした日本語指導や学習支援を行っています。また、寄附で寄せられた学用品の提供や、在浜松ブラジル総領事館の協力による心理カウンセリング、保護者面談等も実施しています。金城氏からは、新型コロナウイルスの影響で全員を受入れることができず、参加待機している子どもがいることや、保護者からの相談も増えているという報告が聞かれました。
伊豆の国市国際交流協会「日本語話そう会」 久木野和暁氏(協会会長)

特定非営利活動法人ARACE代表理事 金城アイコ氏

A「日本語教室の運営や実施体制について」B「日本語教室の活動内容や教材について」C「外国人参加者について」D「日本語ボランティアについて」E「子どもへの日本語・学習指導の実施体制について」F「子どもへの日本語・学習指導の内容や教材について」の6つのテーマに分かれ、情報交換を行いました。グループ内で議論を深めるには時間が足りず、多くのグループが課題共有に留まってしまいましたが、地域を超えて共通の関心ごとをもつ方たちが顔を合わせる機会となりました。
今後は、さらに関心のある方同士がつながり、議論を深める機会を設けていきたいと思います。
特定非営利活動法人 ARACE 代表理事 金城アイコ氏が逝去されました。長年の功績に心より感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。