静岡県日本語ボランティアセミナー2021

2021年03月08日

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毎年実施している本セミナーは、オンライン会議システムZoomを使い初のオンライン開催となりました。1月17日日曜日に開催され、グループ参加の方も含め106名の方にご参加いただきました。

第1部「コロナ禍に試される多文化共生-コロナ禍が外国人従事民にもたらした困難を振り返る-」

講師

髙貝亮氏(公益財団法人静岡県国際交流協会会長/弁護士)

報告者

  • 佐々木綾氏(静岡日本語教育センター校長)
  • 知念カヨコ氏(エスコーラオブジェチーボ・ジ・イワタ校長)
  • ラクスミ・デワヤニ氏(静岡県多文化共生総合相談センターかめりあ相談員ほか)

講師の髙貝会長からは、これまでのコロナウイルスの状況を振り返り、外国人住民が抱える生活課題について解説いただきました。昨年6月の時点で、「休業や勤務時間の減少により仕事が減った」、「失業中」の外国人が増加したことが示され、失業者数の割合は、日本人に比べて外国人は非常に高く、これはアルバイトや非正規雇用等、景気が大きく影響するような状況下で生活している外国人が多いことによるという解説がありました。また、リーマンショックの時は、帰国した外国人も多く、在留外国人数の減少傾向が数年続きましたが、今回のコロナウイルスでは在留外国人数の変動は発生していないことが示されました。留学生活が終了し、帰国したくてもできない留学生や、実習期間は終了したものの帰国できない技能実習生などがいる一方、国としても就労可能な特定活動資格による在留許可の柔軟な運用や失業手当の特例交付など、生活を維持するための支援策を講じていることが紹介されました。ただ、日本語が不十分で情報弱者になりやすい外国人は多く、コロナウイルスに関連する体調の不安だけでなく、休業や収入の減少など、生活全般に不安を抱えており、引き続き多言語による情報提供や相談対応が重要であることが説かれました。

静岡市にある日本語学校「静岡日本語教育センター」の佐々木校長からは、コロナの影響で通常約150人の生徒数が約半数になったこと、その後11月から生徒の受入れが再開された報告がありました。飲食店でアルバイトをする留学生のシフトは減ったが、日本語があまり必要ではない弁当や総菜を作る工場でアルバイトをする学生の需要は減っていないこと、日々の生活をやりくりしても、学費は母国からの仕送りに頼っている生徒が多く、工面できず困っている生徒もいるというお話でした。また、4-5月のころはインターネットやパソコン環境が整っていない学生が多く、オンライン授業への切り替えは難しく、少人数制で授業を実施していたものの、その後、学校全体でオンライン授業のトレーニングをしたり学校外の方とのオンラインで新しいつながりを持ったりするなど今までにない配慮と工夫をされている様子が伺えました。

磐田市にあるブラジル人学校「オブジェチーボ・ジ・イワタ」知念校長からは、現在、約140名の子どもたちが在籍しているが、授業料が払えない理由で学校を辞めたり、給食費が払えず午前中で帰ったりする子どもがいるというお話がありました。保護者からは授業料の支払い期限延長や、雇止めになったなどの相談を受けていること、学校を辞めて公立の学校に転校した子どもの中には日本語が全くわからない子どももおり、心配しているという報告でした。
インドネシア出身のラクスミさんからは、相談事例をご紹介いただきました。アルバイトの減少で生活が苦しくなり就職活動ができない留学生からの相談や、会社から丁寧な説明がないまま自宅待機を余儀なくされ、期間が長くなるにつれて不安が増している相談や、コロナが怖くて自宅にこもっている、妊娠中の女性からはオンラインの日本語学習についての相談を受けたことが報告されました。

第2部 オンライン日本語活動のすすめ -実践者から活動のヒントを聞こう-

講師

三田地真実氏(星槎大学大学院教育学研究科)

実践者

  • 石井千恵子氏(のびっこクラブみしま代表)
  • 半場和美氏(NPO法人フィリピノナガイサ事務局長)

講師の三田地先生からは、Zoomの利点やオンライン授業を実施する際の注意点を具体的に講義いただきました。三田地先生には、コロナウイルスの影響により急速にオンラインの活用が普及する一方で、「ホスト」が気を付けるべき参加者の誘導の仕方や、参加者側にも求められる「マナー」などについてご説明いただきました。

また、対面授業でもオンライン授業でも重要なのはファシリテーション力であること、オンラインを苦手意識で避けるのではなく、上手くつきあっていけるように挑戦してみることのメッセージがありました。講義では、ブレークアウトセッションというオンラインでのグループワークを始める前に適切に教示をした場合と教示をほとんどせずいきなりスタートした場合では、参加者が後者で大変不安になるという実際の体験をすることで、「教示」の重要性を学んだり、投票、コメント、ホワイトボードの機能を体験しました。

次に、三島市でZoomを使って子どもへの日本語支援活動をしている「のびっこクラブみしま」石井様から実際にどのような活動をしているか、実践例の紹介がありました。のびっこクラブでは、日本大学国際関係学部のグループ「アモール」の学生と一緒に学習支援をしています。オンラインの活動は「つながり合うこと」を目的とし、「心の元気をとりもどす」、「生活のリズムをとりもどす」、最後に「学習の遅れをとりもどす」、という気持ちで、できることから始めたという報告がありました。

浜松市「フィリピノナガイサ」半場様からは、学校が臨時休校になっても学校からのお知らせが読めない保護者、宿題をこなせない子どもを支援するためにオンラインを活用したという報告がありました。オンラインでは、新たな試みをするのではなく、既存のリソースやこれまでの活動を活かした子どもたちとコミュニケーションを図ったところ、子どもだけでなく保護者の不安も軽減させることにつながったというお話でした。

最後に参加者はブレークアウトセッションの機能を使って、6人程度の小グループに分かれ、1. オンラインでできそうだと思ったこと、不安なこと 2. 日本語ボランティアの「強み」をテーマに意見交換をしました。オンラインについては、Zoomの基礎的な機能を理解した、失敗しながらでもやっていきたい、という声が多く聞かれました。日本語ボランティアの強みについては、相手に臨機応変に応えられる、本音を聞き出すことができる、生活サポートができる等の意見が多数挙げられました。

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