令和4年度 静岡県遠隔ビデオによる医療通訳専門講座(令和4年度一般財団法人自治体国際化協会助成事業)

2022年10月01日

 

現在当協会が実施する医療通訳の紹介は対面を原則としていますが、新型コロナ感染症の影響もあり、遠隔ビデオによる医療通訳も場面によっては必要となります。
今後は、医療通訳登録者が、対面とオンラインを組み合わせた医療通訳を提供することを目的に、遠隔ビデオによる医療通訳者を養成するための研修会を開催しました。

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研修会は、第1回(7月24日)はオンラインで医療従事者による基礎講座を、第2回(8月6日・7日)は対面で言語別講師による演習を行い、最後に遠隔(オンライン)ビデオによる医療通訳の登録試験を行いました。
対面と遠隔の医療通訳の違いを知識と実技で学び、中国語4名、ポルトガル語9名、スペイン語6名、ベトナム語4名、フィリピノ語4名 合計 26名の方に登録いただきました。
今後協力病院からの要望に応じ、実際に遠隔ビデオによる医療通訳を行うことになります。来年度以降、遠隔通訳の実施に向けて、協力病院と検証します。

基礎講座では、「遠隔ビデオにおける医療通訳の注意点 対面と遠隔ビデオ対応の違いや医療通訳に必要な医療用語等」をテーマに、ブラジルの医師免許を持ち、領事館で医療相談も担当していたメディフォン株式会社 中萩 エルザ氏にお話いただきました。
その一部を紹介します。

 

医療通訳における遠隔支援は、相手がわからない、守秘義務が守れるのかなどの理由から、受けない病院がありましたが、専門家のコーディネートや移動時間の短縮、コロナ禍における対面の回避等の理由から、受付、会計、薬局、看護師の説明、診察等様々な場面から依頼があり、オンラインが進んでいる。
遠隔通訳を行う準備として、器材やその充電の確認やメモを取るための紙、ペン、辞書を手元に置いておくこと、また、自宅などで通訳する場合は、近くの工事の音等が聞こえないよう静かな場所の確保も必要となる。
遠隔通訳は、対面とは違いがあるため、通訳をする際には、いくつか注意が必要である。
対面では出来る外国人患者や医療従事者とのアイコンタクトやその場で確認できる診断画像などは、遠隔ではむずかしいため、より注意深くアンテナを張ることが大切である。
声のトーンなどでわかることも多いし、表情が見えない分言葉で確認を取っていくこと、通訳終了時には、外国人患者や医療従事者の反応も注意してほしい。最後の声が明るかったか、すぐに切られてしまっていないか等である。
対面では待合室での患者との時間などがあり、情報を事前に聞くこともできるが、逆に情報がありすぎて困ることがある。遠隔では余分な情報がなくてすむ利点はあるが、患者の状況をその場でキャッチしながら、対応することとなる。
聞き取りにくい場合は、途中で、ゆっくりはっきり近くで話してほしいと伝えること、正確に説明するためメモは必ず取ること、共有画面を活用し、必要な資料は確認すること等を通して、正確に通訳をしていってほしい。
対面以上に集中力が求められることから、長く通訳をする場合には、休憩をはさんでほしいと要望をすることも必要である。
また、通訳終了後書きとったメモなどは、守秘義務の観点から保存にも気を付けること。
通訳が終わったら、いつもふりかえりをしている。通訳はうまくいったかな、落ち度がないかな、言い忘れたことはないかな、もっと良く出来なかったかな、患者さんは疲れていないかな、ドクターは安心して自分に依頼されていたか等考えている。
通訳者自身のメンタルケア―も大切である。自分の限界を知ること、必要であれば、専門家(臨床心理士等)へ相談すること、次のケースをこなすために、メンタルを管理すること、切り離せる時間を自分で持つことが大事である。

 

遠隔通訳や通訳場所等における注意点等を具体的に説明いただきました。
お話いただいた後、受講者との質疑応答がありました。

医療通訳や経験が持てないことや、勉強の時間も取れないため、続けていけるかどうか不安という受講生の質問に、最初の気持ちを忘れず、勉強をしていくことが大事であること、経験を積む、日記を書くなど、好きな仕事であればがんばってやってほしいと励ましをいただいたり、同じ地域に住む外国人から、ボランティアで通訳を頼まれてしまったらどうしていますかという質問では、自分の姿勢を決めておく、仕事とプライベートの線引きはむずかしいが、一生懸命にいつもやっていれば、気軽に通訳を頼まれることはなくなるなど、経験を多く積んでいる講師ならではのアドバイスをいただきました。
ベテランである講師も、新聞やテレビなどを活用し、翻訳・通訳にチャレンジするなど、今でも勉強を続けている。自分の知識がからっぽであれば人を助けられない。宝の知識があれば、人を助けることができると考え、日々努力されているということを伺い、受講生みんなとても勇気づけられました。