同じことで悩んだから、助けてあげたい

2019年10月24日

静岡県国際交流協会
外国人支援アドバイザー 伊藤洋子さん

深刻な人手不足を補うために出入国管理法が改正され、4月から配偶者や子供ら家族も含め多くの外国人を受入れていくことになります。私たちは彼らとますます日常生活圏を共有することになっていくでしょう。14歳の時フィリピンから来日して日本に帰化した伊藤洋子さんのお話から、多文化共生のためのヒントがなにか得られるのではないでしょうか。

伊藤洋子さんは、お子さん2人が成人した現在、検察庁を含め様々なところで通訳として活躍しています。また去年の11月から県国際交流協会外国人支援センターのアドバイザーとして勤務し、フィリピノ語、英語、日本語を使って外国人の生活相談にのっています。

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来日後の日本の暮らしはどうでしたか

やはり、言葉の壁がありました。日本語が全く分からない状態で1988年3月に来日し、1ヶ月間小学校の1年生のクラスに入ってひらがな、カタカナ、簡単な漢字を必死に勉強しました。4月からすぐ中学3年に転校して、卒業後はその頃藤枝市にあった日清紡績の工場で働きながら定時制高校に通いました。工場の中に学校も女子寮や食堂もあって、日本人と同じ生活をしましたので、日本語を覚えるにも、日本の生活に慣れるにも、本当に役に立ちました。

高校の女子寮で友達をたくさん作りました。なんとか日常会話はできたので、皆の会話の仕方とか態度とかを見ながら周りに合わせるようにしました。日本人の控えめな態度や、相手の人を気遣って優しく話をしている様子など、敬語を使ってお互いにリスペクトしている印象を受けました。原因が分からずに友達とうまくいかなかった時がありましたが、後になり、私の言葉が不十分で相手に誤解されたと分かりました。相手にとっても私は異文化の人ですから、本当の気持ちが伝わりにくかったのですよね。

日本語の習得についてお話しください

高校の頃は時間さえあればいつも国語の教科書を開いて、読んだり書いたりしていました。テレビドラマ、NHKの番組をよく見て分からない言葉があるとすぐ辞書で意味を調べました。テレビの影響は大きいですね。そういう風に工夫し、努力したら日本語をたくさん覚え、早く話せるようにもなりました。言葉を覚えるには頑張る気持ちがないと覚えられません。最終的に自分のがんばり次第です。

グローバルな社会に向けてなにが必要だと思いますか

日本人に日常英会話をもっと学んでほしいと思います。話せるとコミュニケーションがもっとスムーズになるのではないでしょうか。考え方も常識も全く違う外国人が増えると、日本の環境がずんずん変わってくるかもしれませんね。日本人の守っている環境や自然を大事にして欲しいですから、その情報を教えなくてはなりません。多言語の「暮らし方の情報誌」を配り、生活の仕方を伝える窓口の設置は基本的な対策だと思います。

無料で日本語を学びながら、日本の文化やマナーを教えてくれる場所があるといいですね。日本に働きに来る人は家族も一緒の場合があり、言葉が分からないと皆に溶け込めないし、いじめに会う可能性があります。本当に言葉は「武器」だと思います。

新しく入ってくる人に対して何かメッセージありますか

日本人の価値観を学んで、少しでも日本人と同じような生活をしようとすれば、地域の人との問題も起きないと思います。友人が家でパーティーを開いて大声で騒いだので、近所の人が警察を呼んでアパートを出されました。自分の価値観で自由にやった結果です。周りに合わせて暮らすことの重要さに気づいてほしかったです。同時に日本の方たちにも何から何までダメというのではなく、少しの寛容さと理解を示してほしいと思います。
また、たとえ数年の出稼ぎでも、日本語や日本の文化を学ぶことが自分の財産になることを分かってほしい。学んだことが帰国しても活かせるからです。日本語の先生をしたり、日本企業に就職できる機会もあるかもしれません。

日本人の、周りに配慮する暮らし方、「譲る」文化「並ぶ」文化、ゴミの分別、しっかりしたマナーや挨拶への意識の高さ、こういった素晴らしい点を外国人に気づいてほしいです。

将来はどうしますか

ソーシャルワーカー的な仕事を続けていきたいと思います。私も日本に来たばかりの時は同じような悩みを持ち、皆の気持ちがよく理解できるので助けてやりたいと思うのです。外国人にボランティアで日本語を教える機会があればそれにも参加してみたいです。

記:編集ボランティア 川島康子